先日、4月から入社した新入社員が2日で退職した、といった出来事が話題となった。SNS等に退職したと書き込まれたことがきっかけのようだ。
4月から働き始める人が何十万人もいることを考えればそんな人もいるだろうということになるが、早期の退職は莫大な手間とコストを採用にかけている企業にとって多額の損失となってしまう。
人手不足の中で新入社員に逃げられないためにはどうすれいいか? そこで参考になるのが歌のお兄さんの交代方法だ。
■NHK歌のお兄さんが交代した!
筆者は二人の子育て中の父であるが、4月からNHK「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんが交代した。お兄さん歴は歴代最長の10年間であり、子どもを授かってからずっと慣れ親しんできた存在であったため、思わずグッときた次第だ。
「NHK Eテレで30日朝に放送された「おかあさんといっしょ」(月~土曜、午前8時)で、「うたのお兄さん」の交代あいさつが行われた。(中略)花田を含めた出演者5人で「にじのむこうに」を歌った。5人は画面中央で手を合わせると、花田を中心に手をつないで歌った。
日刊スポーツ「11代目うたのお兄さん、横山だいすけ卒業あいさつ」2017/3/30」
上記の放送については、卒業式を思わせる演出に感動すると同時に、随分丁寧な引き継ぎだな、という感想を抱いた。
■人気こども番組に見る最終回の演出
そういえば、同じく子ども向けの「プリキュア」や「仮面ライダー」シリーズの最終回も子どもと一緒に見たが、それぞれ最終回には必ず次シリーズの主人公が出演し、次週から新シリーズが展開する旨の告知(暗示)を丁寧に行っていた。
筆者の子ども時代もヒーロー物やアニメなど、子ども向け番組を見ていたが、ここまで旧番組と新番組の橋渡し的な演出が丁寧になされていた記憶はあまりない。せいぜい番組終了後に「来週からは○○が新しく始まるよ!」程度の番宣がなされていただけのように思う(むろん筆者の見聞きし、かつ記憶の範囲内ではあるが)。
既に実質の最終回的は放送済みであったため、単に「次シリーズの番宣」という認識でいたが、ここまで同旨の演出が続くからには、番組側の何かしらの配慮が感じられる。
■人はどのようなときにストレスを感じるのか
人がどのようなライフイベントでどのくらいのストレスを感じるのか、については心理学者ホームズとレイが「社会的再適応評価尺度」(Social Readjustment Rating Scale:SRRS)」というデータを作成している。
これは、「結婚」、「配偶者の死」、「退職」など、人生において遭遇する重大な出来事や生活の変化、いわゆる「人生の出来事」型ストレスを43項目取りあげ、その出来事によって受けるストレスの重みに応じて点数化「重みづけ得点」したものである。米国の研究では、過去1年以内に体験した出来事の合計点数が150点以上の場合、翌年に何らかの健康障害を生じる危険性が約50%、300点以上の場合は90%以上とされている(武田コンシューマーヘルスケア株式会社「タケダ健康サイト」)。
上記によれば、「配偶者の死」が最高の100点となっており、2位に「離婚」(73点)、3位に「夫婦別居生活」(65点)、7位「結婚」(50点)、8位「解雇・失業」47点、10位「退職 」(45点)等となっている。
注目すべきは一般におめでたいこととされる「結婚」や「妊娠」(12位、40点)、「新しい家族が出来る」
(14位、39点)とされていることである。たとえおめでたいことであってもそれに伴う環境の変化は、時にストレッサーになる、ということが推察される結果だ。当然に、「経済状態の変化」(16位、38点)や 「仕事の変更」(18位、36点)など、直接的な身の回りの変化はストレスを感じるという結果になっている。
特筆すべきは、それら環境の変化によるストレスは、金銭上の問題(「1万ドル以上の借金」20位、31点)よりもストレスフルであると評価されていることだ。ビジネスパーソンの多くに自身を含めた環境の変化が起こる4月は、特ににストレスを感じやすい時期であることが分かる。
■新入社員を2日で辞めさせないために、必要なこと
さて上述の番組は、いずれも多くの子どもが夢中になる人気番組である。次シリーズの視聴者囲い込みやキャラクターグッズの販促という意図は当然あるにしても、環境の変化によるストレスをいくらかでも逓減できるように、という配慮からの演出と言えないだろうか。
子どもたちとて身の回りの変化には敏感だ。私事にはなるが筆者の幼子二人を見てみても、保育園で進級し担任の先生が変わった直後から、やはり情緒が不安定な様子である。4月は何かと親も気ぜわしく、慌ただしい生活を送ることとなる。
読者の皆さんの会社にも、新入社員がいるに違いない。彼らは学生から社会人(転職者は前職から現職)という大きな変化の渦中にいるはずだ。「肩の力を抜いて」といくらアドバイスしたとて、心からリラックスした日々を過ごせる新入社員は希であろう。
奇しくも「新入社員が2日で辞めた」等という未確認情報が流布されつつあるが、そのような事態を防止する意味でも、彼らのストレスフルな生活に思いをはせる必要がある。「どうしたの」「困ったことがあればなんでも聞けよ」という先輩からのさりげない一言や態度が肝要だ。時には新入社員の学生時代の趣味など、雑談に興じるのも良いだろう。
彼らは今、楽しかった過去から辛い現状へと船出したばかりである。不安やストレスを軽減できるよう、社会人の先輩として、立ち居振る舞いには留意したいものだ。
後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント
人手不足の中で新入社員に逃げられないためにはどうすれいいか? そこで参考になるのが歌のお兄さんの交代方法だ。
■NHK歌のお兄さんが交代した!
筆者は二人の子育て中の父であるが、4月からNHK「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんが交代した。お兄さん歴は歴代最長の10年間であり、子どもを授かってからずっと慣れ親しんできた存在であったため、思わずグッときた次第だ。
「NHK Eテレで30日朝に放送された「おかあさんといっしょ」(月~土曜、午前8時)で、「うたのお兄さん」の交代あいさつが行われた。(中略)花田を含めた出演者5人で「にじのむこうに」を歌った。5人は画面中央で手を合わせると、花田を中心に手をつないで歌った。
日刊スポーツ「11代目うたのお兄さん、横山だいすけ卒業あいさつ」2017/3/30」
上記の放送については、卒業式を思わせる演出に感動すると同時に、随分丁寧な引き継ぎだな、という感想を抱いた。
■人気こども番組に見る最終回の演出
そういえば、同じく子ども向けの「プリキュア」や「仮面ライダー」シリーズの最終回も子どもと一緒に見たが、それぞれ最終回には必ず次シリーズの主人公が出演し、次週から新シリーズが展開する旨の告知(暗示)を丁寧に行っていた。
筆者の子ども時代もヒーロー物やアニメなど、子ども向け番組を見ていたが、ここまで旧番組と新番組の橋渡し的な演出が丁寧になされていた記憶はあまりない。せいぜい番組終了後に「来週からは○○が新しく始まるよ!」程度の番宣がなされていただけのように思う(むろん筆者の見聞きし、かつ記憶の範囲内ではあるが)。
既に実質の最終回的は放送済みであったため、単に「次シリーズの番宣」という認識でいたが、ここまで同旨の演出が続くからには、番組側の何かしらの配慮が感じられる。
■人はどのようなときにストレスを感じるのか
人がどのようなライフイベントでどのくらいのストレスを感じるのか、については心理学者ホームズとレイが「社会的再適応評価尺度」(Social Readjustment Rating Scale:SRRS)」というデータを作成している。
これは、「結婚」、「配偶者の死」、「退職」など、人生において遭遇する重大な出来事や生活の変化、いわゆる「人生の出来事」型ストレスを43項目取りあげ、その出来事によって受けるストレスの重みに応じて点数化「重みづけ得点」したものである。米国の研究では、過去1年以内に体験した出来事の合計点数が150点以上の場合、翌年に何らかの健康障害を生じる危険性が約50%、300点以上の場合は90%以上とされている(武田コンシューマーヘルスケア株式会社「タケダ健康サイト」)。
上記によれば、「配偶者の死」が最高の100点となっており、2位に「離婚」(73点)、3位に「夫婦別居生活」(65点)、7位「結婚」(50点)、8位「解雇・失業」47点、10位「退職 」(45点)等となっている。
注目すべきは一般におめでたいこととされる「結婚」や「妊娠」(12位、40点)、「新しい家族が出来る」
(14位、39点)とされていることである。たとえおめでたいことであってもそれに伴う環境の変化は、時にストレッサーになる、ということが推察される結果だ。当然に、「経済状態の変化」(16位、38点)や 「仕事の変更」(18位、36点)など、直接的な身の回りの変化はストレスを感じるという結果になっている。
特筆すべきは、それら環境の変化によるストレスは、金銭上の問題(「1万ドル以上の借金」20位、31点)よりもストレスフルであると評価されていることだ。ビジネスパーソンの多くに自身を含めた環境の変化が起こる4月は、特ににストレスを感じやすい時期であることが分かる。
■新入社員を2日で辞めさせないために、必要なこと
さて上述の番組は、いずれも多くの子どもが夢中になる人気番組である。次シリーズの視聴者囲い込みやキャラクターグッズの販促という意図は当然あるにしても、環境の変化によるストレスをいくらかでも逓減できるように、という配慮からの演出と言えないだろうか。
子どもたちとて身の回りの変化には敏感だ。私事にはなるが筆者の幼子二人を見てみても、保育園で進級し担任の先生が変わった直後から、やはり情緒が不安定な様子である。4月は何かと親も気ぜわしく、慌ただしい生活を送ることとなる。
読者の皆さんの会社にも、新入社員がいるに違いない。彼らは学生から社会人(転職者は前職から現職)という大きな変化の渦中にいるはずだ。「肩の力を抜いて」といくらアドバイスしたとて、心からリラックスした日々を過ごせる新入社員は希であろう。
奇しくも「新入社員が2日で辞めた」等という未確認情報が流布されつつあるが、そのような事態を防止する意味でも、彼らのストレスフルな生活に思いをはせる必要がある。「どうしたの」「困ったことがあればなんでも聞けよ」という先輩からのさりげない一言や態度が肝要だ。時には新入社員の学生時代の趣味など、雑談に興じるのも良いだろう。
彼らは今、楽しかった過去から辛い現状へと船出したばかりである。不安やストレスを軽減できるよう、社会人の先輩として、立ち居振る舞いには留意したいものだ。
後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタント